阿部峻介
仮想通貨の報酬を得るため、他人のパソコンの機能を無断で借りるプログラムを使ったのは違法か。この点が問われた刑事訴訟で、最高裁第一小法廷(山口厚裁判長)は検察側、弁護側の意見を聞く弁論を12月9日に開くと決めた。二審の判断を変える際に必須の手続きで、逆転有罪とした二審判決が見直される可能性がある。
不正指令電磁的記録保管の罪に問われているのは、東京都内の男性ウェブデザイナー(34)。自身が運営する音楽情報共有サイトに2017年9月、プログラム「コインハイブ」を試験導入した(現在はサービス終了)。閲覧者のパソコンのCPU(中央演算処理装置)を借りて仮想通貨取引の情報整理を手伝わせる仕組みで、同11月までに情報整理の報酬として約800円相当の仮想通貨を得た。
一審「被害そんなにない」と無罪、二審は「許容できない」と有罪
一審・横浜地裁は、パソコン所有者の被害はパソコンの処理速度の低下や消費電力増ぐらいで、ウェブ広告収入に代わりサイト運営を支える新手法として肯定的な評価もあったと指摘。「不正な指令」とは言い切れないと判断し無罪とした。二審・東京高裁は、所有者が知らないうちにパソコンを動かした不利益があり「許容すべきでない」と罰金10万円の有罪とした。
上告した弁護側は、11年にできた同罪は情報を壊したり盗んだりするコンピューターウイルスを想定したもので、今回のケースにも当てはめれば「恣意的(しいてき)な刑罰を禁じる憲法の罪刑法定主義に反する」と主張。プログラム開発の萎縮にもつながり、表現の自由も侵害すると訴えていた。(阿部峻介)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル